心を揺さぶる日本のリズム
東京の真ん中で下駄の音が鳴り響く【郡上おどり in 青山】
6月24日・25日に開催された郡上おどり in 青山 に参加してきた。
なぜ東京の青山で岐阜の郡上おどりを踊るかというと、郡上八幡城主の青山家の菩提寺が青山の梅窓院にあるというご縁から、保存会の方々を招き始まったそう。(青山という地名も青山家に由来する)今年で23年目。意外に長いことやっている。
ワタシが盆踊りに目覚めて4年程になるが、それまでは東京の真ん中でこんなにも楽しいことが行われていたなんて知る由もなかった。なぜ誰も教えてくれなかったんだ。それまでの夏の楽しみと言えば、たまに海に行って、BBQでもして、花火観て、あちぃ〜って言いながら麦茶をガブ飲みするぐらいなもんだった。(それはそれで結構楽しかったんだけど)でも、出会ってしまったのだ。もうあの頃の自分には戻れない。そんな “受け身” の夏では満足できない身体になってしまったのだ!!
郡上八幡のうまいビールを東京で味わう
浴衣に着替えて、郡上おどり用の下駄を履いて、郡上八幡で買った手ぬぐい(タカラギャラリーワークルームで購入。オリジナルも作れる!)を持って家を飛び出す。一日目は残念ながら夕方から雨マークで、ずぶ濡れ覚悟で臨んだ。
会場に着くと案の定パラパラと雨が当たってきたが、そんなことは気にせず、まずは景気付けに一杯やるとする。郡上八幡を訪れた際に発見した「こぼこぼ」というクラフトビールのお店が出店しているということで、まずはご挨拶。ここの店主さんは相当こだわりが強く、どうしても郡上の水でビールが作りたかったそうで、なんとお店の地下でビールの製造を行い、その場で瓶詰めまでしている。店主さんは地質学に詳しく、分厚いファイルを取り出し、中にあった細かい地図を見ながら説明してくれた。郡上の水の成分はなんかこう、、とにかく相当いいらしい。(すいません。いい感じに酔っぱらっててうろ覚えなので詳しくは実際にお店に行って聞いてみることをおすすめします。)こぼこぼのビールはやっぱり美味しかった。
写真は郡上八幡にあるお店を訪れた時のもの
雨? むしろ大歓迎!!!
踊り開始は17時からなのだが、16時頃から踊りの講習会も行われているので、全くの初心者でも練習してから本番に臨むことができる。
そして雨がパラつく中、郡上おどりがスタートした。まずは「古調かわさき」という比較的ゆったりとした曲から始まった。情緒豊かな生の唄声と、演奏が青山に響き渡る。東京にいながら岐阜の郡上八幡の雰囲気を味わえるなんて、ほんとうに贅沢だなあ、と喜びがこみ上げてくる。続いて「かわさき」「三百」などがかかっていく。雨も少しずつ強くなってきたが、誰も踊りをやめようとする人はいない。それどころか、みんなむしろ『もっと濡れたい!!!』といった様子で、どこか嬉しそう。ワタシもほっかむりをしながら踊り続ける。「春駒」がかかると、盛り上がりは最高潮に。飛んで跳ねて、たくさんの下駄の音が東京の青山という小洒落た街に鳴り響く。
途中の休憩時間にはお免状の表彰(踊りが上手だった方が貰える踊りの免許。その日のお題が決められていて、保存会の方が審査する。)と、お楽しみ抽選会(特製手ぬぐいを買うと抽選券が付いていて、豪華商品が当たる。みんな狙っているのは郡上宿泊ペアチケット。)が行われる。どちらにも手が届かなかったワタシは明宝ハム(郡上の特産品)にかぶりつく。
ここからが郡上おどりの本当の醍醐味
日が暮れてくると同時に、あれだけ真っ黒だった雨雲がどこかに行ってしまったようで、会場は梅雨の蒸し暑さと踊る人々の熱気で盛り上がりはさらに増していった。その後もワタシの好きな「猫の子」「げんげんばらばら」がかかり、脳内は完全に郡上八幡にトリップしていた。濡れていた浴衣もすっかり乾いてしまい、ずぶ濡れ覚悟だったワタシは少し拍子抜けしてしまった。
最後の踊りはもちろん「まつさか」。この曲が流れると決まって複雑な心境になる。身体は疲れてヘトヘトなのに、心は『もっと踊っていたい』と言う。終わりたくないと思ったワタシは自分に言い聞かせる。
『今年のお盆も本場の郡上おどりを朝まで踊り続けるんだから!』
そうだった。夏はまだ始まったばっかりだった。
踊り終わった後にお疲れ様のビールを頂く。やっぱり美味い。
【 郡上おどり in 青山 】
毎年6月第4金・土あたり(日程変更の可能性あり)
※ 雨天決行
待ちに待った盆踊りシーズンの幕開け!【山王祭 納涼大会】
山王祭とは、江戸三大祭り(他に、神田祭・深川八幡祭)の筆頭であり、日本三大祭(他に、京都の祇園祭・大阪の天神祭)にも数えられるスゴい祭なのだ。山王祭自体は6月7日〜17日の間行われており、ワタシは東京に10年以上住んでいるのにもかかわらず、その存在をつい最近知った。お恥ずかしい。
そして、13日〜15日の3日間は日枝神社の境内で盆踊り大会が開催される。これが【東京で一番早い盆踊り】だ。それを聞いた瞬間、もうワクワクが抑えられず、カレンダーに大きく書き込んだ。こうなったらもう何が何でも行かなくては気が済まない性格なのだ。梅雨シーズンではあるが、ここの盆踊りはテントの中にやぐらが組まれるらしいので、雨でも決行されるとのこと。
東京で一番早い盆踊りに一番早く来ちゃった
今年初の浴衣に手を通し、電車に乗り込む。少々時期外れな浴衣姿のワタシに乗客たちの視線が突き刺さる。しかもこの日は朝から雨が降り続き、ワタシが盆踊り会場に着いても止むことはなかった。(1時間半も前に着いた。気合い入り過ぎ。)早く来すぎたこともあり、人もポツリポツリしかおらず、折り畳み傘を畳みながら少々不安になっていた。開始まではまだ時間があったので、日枝神社に参拝した後、景気付けに生ビールを頂く。腹ごしらえも済ましてしまおうと、焼き鳥、モツ煮、焼きそばを頂く。美味い。安定の祭の屋台の味にホッとする。
日が暮れるに従って、人の数も増えて徐々に活気が出てきた。おそらく様々な盆踊りに参加しているであろう方たち(姿や立ち振る舞いで何となく分かる)も集まってきた。なにせ、平日の週始めの雨の日である。そんな日に浴衣や着物を着て提灯の下に集まるなんて相当な盆踊ラー(盆踊りにとり憑かれている人)なのである。実際に、他の盆踊りで見かけたことがある方もいらっしゃった。みんな『もう待ちきれない』といった様子で開始までの時間をそれぞれ過ごしていた。
神様をも味方に付ける踊り好きたち
盆踊り開始の18時半になり、日枝神社の宮司さんが祭の御祈祷をされた瞬間、なんと今までダラダラと降り続けていた雨がピタッと止んだのだ!神様は踊り好きの味方だったようだ。ありがたや!やぐらの上には大太鼓が上げられ、さらしを巻いた叩き手の方々がバチを持って登場。そして絶妙なタイミングで、地元の踊りの会の奥様方がお揃いの浴衣をビシッと決めて現れると、いよいよ盆踊りの始まりだ!
手始めに東京音頭がかけられる。ド定番なので、司会の方も「これはもちろん踊れますよね〜」といった感じで煽ってくる。今年初めての盆踊りなので、ワタシは感覚を確かめるように手足を動かす。一周回り終えると、『あああ〜これこれ!!』と感覚が蘇り、気分も上がってくる。その後も、大東京音頭、炭坑節など定番の曲がかかっていく。人もどんどん増えていき、ドンパン節、八木節、花笠音頭など盛り上がる曲がかかると、会場の熱気は最高潮に!踊りの輪は4重にもなり、テントの外にも踊る人が溢れていた。ワタシも踊りの分からないものは見よう見まねで必死に喰らい付き、気付けばノンストップで2時間半踊っていた。
全部で10種類以上の曲がかかり、ご当地の千代田踊りや、団扇を使ったり、手ぬぐい(先着で日枝神社の手ぬぐいが貰える!)をぐるぐる回す曲など、バリエーション豊かなラインナップだった。ちなみに、この日はメインの山王音頭はかからず、2日目3日目に持ち越しだとのこと。
今年初めての盆踊り。去年の夏ぶりにみた提灯の赤さにクラクラしつつも、踊りの季節が始まった喜びを噛み締め、ご褒美の生ビールを流し込んだ。これだから盆踊りはやめられない。今年もたくさん踊ろう!!
【 山王祭 納涼大会 】
毎年6月13日〜15日 18:30〜21:00頃
※ 雨天決行
せつない恋物語が紡ぎだす美しい言葉たち【お六甚句】
歌詞の中に登場する桂姫は、兼続の主君であり、幼い頃から兄弟のように過ごした上杉景勝 (上杉謙信の養子) の2人の妹のうちの1人である。
この唄は、そんなお六と桂姫の決して結ばれることのないせつない恋を情緒豊かに唄ったものだ。
謙信公まつりの一コマ。鉄砲隊による実演。坂戸山に鉄砲の音が響き渡る。
空が明るくなる頃におとずれる不思議な感覚【郡上おどり②】
夜8時。提灯の灯りに照らされた城下町に、軽やかなお囃子と味わい深い唄声が響き渡る。人々が集まり、どこからともなく踊り出す。町中に下駄の音が鳴り響く。
ワタシは居ても立ってもいられず、早速人々の流れの中に飛び込んだ。
周りを見渡すと、様々な人たちがみな一様に踊っている。お年寄りや若者や子供たちや外国人。年齢や性別や国境は関係なく、そこにはただ踊りたい人だけが集まっていた。
水の生まれる城下町で朝まで踊る!【郡上おどり①】
岐阜県を流れる長良川と吉田川が交わる場所、郡上市八幡町(通称 郡上八幡)で何ともエキサイティングな踊りがある。『郡上おどり』だ。
日本三大盆踊りに数えられ、なんと7月中旬から9月上旬までの32夜開催される。そのうち8月13日から16日の期間は徹夜踊りと言って、夜の8時から翌朝の5時頃まで約9時間踊り続ける。これがすごいのだ。みうらじゅんの言葉を借りれば、DS(どうかしてる)なのだ。
と言っても、江戸時代は各地で当たり前のように朝まで踊り明かしていたらしい。なんという有り余るエネルギー!その江戸時代の空気を感じることの出来る郡上おどりは、約400年ものあいだ踊り継がれ、現在は国の重要無形民俗文化財に指定されている。
一度訪れたら虜に・・・郡上八幡の風景
郡上おどりの舞台、郡上八幡は古い町並みが残っており、そのあいだには美しい水路が走る。夏の暑い日差しに照らされて川の水面はキラキラと光り、足先を浸けると体の芯まで凍るようにキンと冷たい。
通りでは屋台の準備が進められ、これから起こる出来事を予感させ、ワクワクする。
吉田川に架かる橋の上を見ると、身を乗り出し湧き上がる恐怖と戦いながら、川を見下ろす人が。河原には、不安そうな表情とは裏腹に期待に胸を膨らませ、橋を見上げる人々。次の瞬間、その人は川の大きなうねりにすーっと飲み込まれていった。少しの沈黙のあと、その人がうねりの中から這い出てくると、大きな拍手が巻き起こった。いわゆる “度胸試し” である。おそらくビルの5階くらいの高さはあるであろう所から飛び降りるなんて・・・ワタシは絶対にしたくない。これこそDS!!(どうかしてる!!)
しかし、そんな光景を含めワタシはいつの間にか、どこか懐かしく風情や情緒という言葉がよく似合うこの場所の虜になってしまっていた。
バリエーション豊か! 郡上おどりの種類
郡上おどりは10曲もの踊りがある。
『かわさき』『春駒』『三百』『ヤッチク』『古調かわさき』『げんげんばらばら』『猫の子』『さわぎ』『甚句』『まつさか』
これらの曲がランダムに演奏され、人々はそれに合わせて巧みに手や足の動きを変えていく。
かわさきは、郡上おどりを代表する踊りで、歌詞の「郡上の八幡出てゆくときは 雨も降らぬに袖絞る」は郡上おどりを巧みに言い表している。
春駒は、全国的にも広がる有名な踊りで、「七両三分の春駒春駒」という掛け声と共に、飛んだり跳ねたりするテンションの上がる踊りだ。
げんげんばらばらは、「げんげんばらばら 何事じゃ」という一節から始まる。この踊りだけなぜか反時計周りに進んで行く。あともう少しで一周だ!というときにこの曲が流れると、「3マス戻る」のように少し切ない気持ちにもなる。
猫の子は、その名の通り、仔猫になりきって踊る。よく耳をすましているとどこかから、「ニャオ〜〜ン」という猫の遠吠えが聞こえてくる。ぜひ恥じらいを捨て、なりきって踊って欲しい。
まつさかは、昔からの伝統でその晩の最後に一度だけ踊られる、ゆったりとした情緒のある踊り。「シメのお茶漬け」的な存在。(いや、もっと深く意味のあるもの)
こんなにたくさん覚えられないという方でも大丈夫。ゆるやかで単純な動きの踊りも多いので、輪の中に入って周りの人を見ながら(教えてもらいながら)まずは踊れそうなものから踊ろう。
完璧に覚えてから挑みたいという気合いの入っている方。実は「郡上おどりレッスンDVD」なるものが出ていて、画面の中の粋なおばちゃんたちが踊り方を丁寧に解説してくれる。ワタシは郡上に来る前に、盆踊り好きの友人と一緒にそのDVDを見て猛特訓した。
シュミレーションはばっちり。日も暮れてきた。
さぁ、浴衣に着替え下駄を履いたら、いよいよ徹夜踊りのはじまりだ!
つづく
頭の中は盆踊り。
盆踊りの魅力に取り憑かれてしまったワタシ。
もっと盆踊りのことが知りたい!もっと盆踊りを踊りたい!と、窓の外は雪がしんしんと降る真冬にもかかわらず、頭の中は盆踊りでいっぱいです。
目を閉じれば、提灯の灯りと下駄の音、屋台の匂い。あぁ、踊りたい。
人はなぜ踊るんだ?そもそも盆踊りってなんだ?昔の盆踊りと現代の盆踊りの違いは?などなど、、今はいろんな文献がありますが、ワタシの五感でそれを体験して、(勝手に)研究していきたいと思います。
そしてワタシがなぜこんなに盆踊りにハマってしまったのか、自分でも解明出来ていない部分を解き明かしていこうと思います。どうぞお付き合い下さいませ。
盆踊りとの出会い 〜地元編〜
ワタシの中で盆踊りといえば、生まれ育った新潟県南魚沼市六日町に伝わる『お六甚句』。お六とは、戦国武将の直江兼続の子供時代の名前(与六)からきている。(お六甚句については改めて記事にする予定)夏祭りでは『お六流し』といって、商店街を何列にもなって踊り歩く。学校の運動会でも踊っていたし、みんな踊れて当然という感じ。子供の頃は特別盆踊りが好きというわけではなかったし、(お祭りは大好きだったけど)思春期なんて踊るのも恥ずかしかった。それなのに今やことあるごとに「盆踊り行こうよ!!」だなんて、何がどうしたことやら。
今から4年前の夏。東京に住んでいたワタシが実家に帰省すると丁度お祭りがあるという。(大毘沙門大祭 現在は中止)家族で行ってみると、そこにはやぐらが立っていて、その周りには人の輪が出来ていた。『お六甚句』が流れると懐かしさのあまり無性に踊りたくなり、(お酒の勢いもあり)輪の中に飛び込んでみた。「あれ?結構踊れる!」もう何年も踊ってなかったが、子供の頃に覚えた感覚はそう簡単に忘れるものではないらしく、(お酒の勢いもあり)もうノリノリに。といっても、踊り自体はゆっくりなのだけど、心の中がまさに “踊って” いた。
盆踊りとの出会い 〜東京編〜
それからしばらくして、盆踊り好きの友人から「佃島の盆踊りに行かない?」と誘われ、「行く!!!」と一つ返事。東京都中央区の佃という所に『佃島念仏踊り』というものがあるらしい。(これについても追々記事にしていく)どんな所なんだろうと期待して行くと、その一角だけまるで昭和・・・いや、江戸にタイムスリップをしたような空間が現れた。やぐらの上には太鼓にバチを一本持ったジイサンがかすれた声で音頭をとっている。ワタシが今まで聞いた事のない不思議な音頭。その周りでは非常にゆったりとした踊りが繰り返し踊られている。とにかく今までの盆踊りのイメージとは全く違う。意を決して輪の中に入り、前の人の踊りを見よう見まねで踊ってみる。何回か繰り返していると、体が慣れ、体が勝手に動いている。なんだろうこの感じ・・・気持ちいい!!やぐらの上のジイサンはさらに声をかすらせて、踊っている人たちから囃し立てられながらも最後まで唄いきると、拍手が巻き起こった。
なんてブルースでジャズでロックでポップなんだ!!!(音楽の事はよく分からないけど)またしても心が “踊って” いた。
そんなこんなで盆踊りにすっかりハマってしまったワタシは、その後も色々な盆踊りに出向いては踊っています。盆踊りは実際に踊ってその場の空気を感じるのが一番だと思いますが、予備知識があった方がより深く楽しめると思い、このブログにまとめていく所存です。