盆踊り中心の生活

盆踊りや祭りの体験記。身体で心で感じたことを綴っていきます。あぁ、明日はどこで踊ろうか。

空が明るくなる頃におとずれる不思議な感覚【郡上おどり②】

夜8時。提灯の灯りに照らされた城下町に、軽やかなお囃子と味わい深い唄声が響き渡る。人々が集まり、どこからともなく踊り出す。町中に下駄の音が鳴り響く。

ワタシは居ても立ってもいられず、早速人々の流れの中に飛び込んだ。

周りを見渡すと、様々な人たちがみな一様に踊っている。お年寄りや若者や子供たちや外国人。年齢や性別や国境は関係なく、そこにはただ踊りたい人だけが集まっていた。

 

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ワタシが盆踊りにハマってしまった理由のひとつがここにある。
日常生活では交わることのない人たちが、盆踊りをきっかけに同じ場所で同じ音に合わせて同じ踊りを踊っている。その非日常感がとても好きなのだ。そのような交わりが減ってきてしまっている今、盆踊りという場が、より浮世離れしたものに感じるのではないか。そしてその魅力に取り憑かれる人もますます増えていくのではないかと思う。
 

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踊る人はどんどん増え、郡上の町は人々の熱気で溢れかえっていた。
夜が深まるにつれ、心地いい疲労感が襲ってくる。普段は使わない場所に乳酸が溜まってくる感覚を感じる。盆踊ラーズハイになった証拠だ。もうこうなったら、後戻りはできない。ここからが、徹夜おどり醍醐味なのだ。(もはやアスリート)
疲労を越えたところに、その感覚はやってくる。周りを見るとみなやはり浮世離れした者の顔をしている。楽しいのか、苦しいのか、踊りたいのか、踊りたくないのか、そのどれともつかない感情が湧いてくる。でも心地いいという事だけは確かなのだ。
 
日付けをまたぐ頃からは、1時間踊って30分休むを繰り返す。エネルギー補給(お酒)も欠かせない。すでにワタシの身体は悲鳴をあげている。
東の空が明るくなってくると、思考は停止し、感覚だけが鋭くなっていく。なぜ踊っているのか自分でも分からないまま、手が足が勝手に動き、その流れの中からなかなか抜け出せない。400年以上続いているこの歴史の流れの中に今、自分も確実にいるという喜びを感じていた。
完全に空が明るくなった頃、『まつさか』が流れた。最後の踊りだ。
まだ終わらないでという気持ちと、やっと終わるという気持ちが交差する中、最後の力を振り絞って踊る。身体はもう限界にきているが、みな清々しい表情で踊っている。
 
まつさかを踊り終わると、一斉に拍手が巻き起こる。
おつかれ様。本当におつかれ様!!ワタシ!!!みんなと自分を褒め讃えた。
一瞬、夢の中にいたような感覚に襲われたが、全身の疲労感が夢ではなかったことを教えてくれた。この不思議な感覚を求めて、来年もまたここに来てしまうのだろう。
やっぱり、郡上おどりはDS!!!(どうかしてる!!!)
 
帰り道、まだ下駄の音が頭の中に鳴り響いていた。
 
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【郡上おどり】
7月中旬〜9月中旬(8月13〜16日 徹夜おどり)