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盆踊り中心の生活

盆踊りや祭りの体験記。身体で心で感じたことを綴っていきます。あぁ、明日はどこで踊ろうか。

すべての境界線がなくなる優雅な踊り【新野の盆踊り①】

長野県阿南町の新野(にいの)で行われている、新野の盆踊りに行ってきた。


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新野は南信地方に位置し、愛知県との県境にほど近い。近くに電車などは通っていないため、辿り着くまでにはかなりの時間を要する。(JR東海道新幹線豊橋-JR飯田線温田(ぬくた)駅(3時間程度)信南交通温田-新野(50分))
(追記:現在、信南交通バスは廃止。代わりに南部公共バスが運行している。「売木行」乗車「新野支所前」下車)
ワタシは車を利用して行ったのだが、山あいの国道をひたすら進んでいく。
 
そんな長野県の奥地にある新野の盆踊りは、500年以上続く盆踊りで、神々を供養する盆踊りの原型とも言われている。国の重要無形民俗文化財に指定されており、夜の9時〜翌朝の6時まで夜通し行われる。
今回、「徹夜盆踊りの旅 2016」と題して、郡上おどりからはじまり、白鳥おどり、そして新野の盆踊りを巡るプランを立てた。ラストを飾る新野の盆踊りは初めて参加するので、ワクワクが止まらない。何事も初めて経験することは楽しくてしょうがない。完全にワタシの好奇心のスイッチがオンになった。
 
新野に着くと、小さな集落に提灯が灯されていた。もうこれだけでノスタルジックな気持ちになりウルッときてしまう。
 
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真ん中には切子燈籠で綺麗に飾り付けられた櫓があり、その色鮮やかさに目が釘付けになってしまった。新野の盆踊りは楽器など鳴り物は使用せず、櫓の上にいる音頭取りの「音頭出し」と、櫓の下にいる踊り子の「返し」のみで踊る。音頭取りは唄いながら踊り、踊り手は踊りながら唄う。男性の低くずっしりとした唄声と、女性の高く伸びやかな唄声が混ざり合って、なんとも胸がギュッと締め付けられるような懐かしい気持ちになってくる。
踊りは扇子を使った踊り(すくいさ、音頭、おさま甚句、おやま)と、手踊り(高い山、十六、能登)があり、どれもゆったりした優雅な踊りだ。
 
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早速、輪の中に入る。
扇子を使って踊ったことがあまりないので、持ち方も分からずしどろもどろ隣の方の真似をしていると、それを見かねて保存会の方(おそらく。揃いの浴衣を着ていらした)が扇子の持ち方から優しく教えてくれた。
なるほど、扇子ってこう持つのか。
踊り方が分からないとなかなか楽しめないのだが、何回か踊ってコツをつかみ、それが身体に馴染んできて、違和感がなくなる、その瞬間がめちゃくちゃ気持ちいいのだ。手と足がスムーズに動くと、ああ、うまく振り付けたなぁと、なんとも言えない感動が襲ってくる。
 
そんな感じで何曲か教えて頂き、だいたいの曲を踊れるようになった。
 
それにしても、、、
 
 
眠い!!!
眠すぎる!!!
 
郡上おどりと白鳥おどりで徹夜して、疲労が溜まっているというのもあるが、それに加えこのゆったりと優雅な踊りや唄がさらに眠気を誘ってくる。郡上や白鳥は激しい踊りもあり、アドレナリンが出て眠気や疲れも忘れられるのだが、新野の盆踊りは本当の意味で自分を試されている気分になった。踊っている最中、何度もアッチの世界へ吸い込まれそうになる。寝ているのか寝ていないのか。アッチの世界なのかコッチの世界なのか。その境界線すら分からなくなる。
むしろこのテンションで朝まで踊るという方がクレイジーなんじゃないか。正直、これまでの徹夜踊りの中で一番過酷かもしれない。
 
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なんとか限界まで戦ったのだが、ついに睡魔に負けて2時間ほど仮眠を取ることに。
東京は豪雨だそう。こちらは星がたくさん出ている。明日もいい天気になりそうだ。
 
 
朝の4時半。目を覚ますと東の空がうっすらと明るくなって、夜が明ける準備を始めていた。
よし、もう一踏ん張りだ!とワタシも気合を入れて会場へ向かう。人々の唄声が聞こえてくると、なぜかものすごく安心した。夢ではなく、ちゃんと現実に存在しているのだ。
 
もう人も減っているだろう。と思ったら、むしろ増えていて驚いた。明らかに夜よりも活気が出ている。小さな子供たちも走り回っている。安心したのと同時に、どこか違う世界に来てしまったような不思議な気持ちになった。
 
仮眠したおかげで頭はスッキリとし、踊りに集中することが出来た、と思うのだが、なぜかそのあたりの記憶がない。記憶がないという事は身体と踊りが一つになり無意識に動いているからかもしれない。だとしたらすごく良いことだ。
 
グラデーションだった空の色の境界線は完全になくなり、一面が優しい青色になる。周りには踊る人々。この光景がワタシは大好きだ。なぜと言われるとなかなか答えられないのだが、朝がまたやってきたという喜びと、人間というものの面白さに自然と顔がほころんでしまう。
人がさらに増えていき、踊りの輪も縦長に伸びていく。
 
踊る、踊る、踊る。
 
 
そして、ついに山の方から太陽が顔を出す。強い光線が踊りの輪に差し込む。最高に気持ちいい。ワタシは目をつぶって、その光と暖かさを感じながら踊る。
 
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つづく。