盆踊り中心の生活

盆踊りや祭りの体験記。身体で心で感じたことを綴っていきます。あぁ、明日はどこで踊ろうか。

衝撃と感動のクライマックス!【新野の盆踊り②】


新野の盆踊りは3日間夜通し行われる。
初日と、2日目は夜9時〜朝6時まで踊り、最終日のみ朝方に「踊り神送りの儀式」というものが行われる。その時にだけ踊られるのが能登という踊りだ。

朝6時頃。ついに「能登」が始まった。
いままでの優雅な踊りとは、少し異なる力強い踊りだ。音頭取りや踊り子の唄声もそれに合わせるように力がはいる。クライマックスに近づいているのを感じた。

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櫓を見ると、さっきまで櫓を彩っていた、切子燈籠たちが外されているのに気付いた。あとから知ったのだが、この切子燈籠の数は、その年の新仏の数と同じだという。
何が始まるのだろう。期待に胸が膨らむ。

もう身体はへろへろだ。持病の腰痛が暴走し始めていた。しかし、徹夜盆踊りの旅もこの踊りで最後だと身体にムチを打ち、なんとか、どうにか、踊り続ける。(なんでこんなに頑張ってるんだろう、、)

ふと遠くを見ると、向こうの方から何かが近づいてきている。かすかに太鼓と鉦の音が聞こえ、目を凝らすと、切子燈籠を持った人々の行列がこちらに近づいていていた。
周りが急に騒がしくなる。

町の通りに大きな長い輪を作って踊っていたのだが、「小さい輪になって!」と誰かが言うと、その大きな長い輪が細胞分裂を起こすように次々と小さい輪が出来上がっていった。
人々の踊りと唄声に激しさが増していく。

ついに切子燈籠の行列が踊り手のところまで辿り着いた。踊り子たちはさらに大きな声で唄い、踊り続ける。
すると、行列の先頭にいた人がその踊りの輪を崩そうと、踊り子の体を押している。踊り子たちは崩されてたまるかと、お互いの肩に腕をかけ、ラグビースクラムの状態になった。

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そのスクラムを崩そうとする燈籠の列が「やめろやめろ!終わり終わり!」と激しく鉦を打ち鳴らし、踊り子たちはぴょんぴょんと跳ねながら唄い続ける。人々がぶつかり合い、激しいせめぎ合いが繰り広げられる。もうしっちゃかめっちゃかだ。しかし、盛り上がりは最高潮に達していた。

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隣の輪にいたワタシは、唖然としていた。

な、なんだこれは、、!?!?

昨夜の優雅な踊りからはまるで想像できないような光景が繰り広げられていた。
 
ついにスクラムが崩されてしまった。踊り子たちは唄うのをやめ、散らばっていく。燈籠の行
列が前に進んでくる。
そして踊り子たちはまた新たな輪を作る。

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新野の盆踊りは神仏混合の珍しい盆踊りだ。ご先祖様の霊と神様と一緒に踊る。
切子燈籠の行列は最後に神送りの儀式を行う、瑞光院を目指して進む。この神様を送る儀式が終わると盆が終わり、踊りをやめなくてはいけない。しかし、盆踊りが終わってしまうのを惜しむ踊り子たちはこれを阻止しようと、たくさんの輪を作り、踊りを続けようとする。

ついに、ワタシがいる輪に行列が辿り着いた。
隣の人たちとガッチリと肩を組み、踊り続ける。踊りたいものと止めさせたいもののせめぎ合いが始まった。
次の瞬間、体を押し込まれ、ワタシはあっと言う間に人の渦に巻き込まれてしまった。体と体がぶつかり合い、耳元では激しく鉦が鳴らされている。
完全に輪が崩されると、踊りと唄は止んだ。嵐が過ぎ去った後のように、ワタシは呆然とする。
しかし、隣からはまだ力強い唄声が聞こえている。ワタシもまた輪に混ざる。

これが約1時間ほど続けられ、ようやく最後の儀式が行われる瑞光院に到着した。高台にある、見渡しのいい場所だ。
人々が見守る中、先ほどまで行列になっていた切子燈籠が綺麗に折りたたまれ、積まれていく。

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行者がその前で呪文を唱える。「テイッ!」「トウッ!」と九字を切り、腰についていた刀を抜き、道切りをした次の瞬間、後ろの方から、

シュルシュルシュルシュル、、、、

パァァンッ!!!

と花火が上がった。
山にその音が響き渡り、見上げると眩しいくらい真っ青な空があった。ワタシは身体の底の方から熱いものが湧き上がってくるような感覚を感じ、なぜか涙が溢れそうになった。

そしてその合図で、積み重ねられた切子燈籠に火が点けられ、瞬く間に燃え上がっていった。
その灰たちが風にのって空へと舞い上がっていく様子が、本当にご先祖様や神様が帰って行くかのように思え、また感動を覚えた。
今年はここ数年で一番いい天気だったようで、山や田んぼの緑、空の青、炎の赤が色鮮やかで眩しかった。

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儀式は終わり、新野のお盆も終わった。

最後にもう一つ決まりがある。帰りの道は決してうしろを振り返ってはいけないらしい。
振り返ってしまうと、悪霊がついてしまうとか、踊りの神様がついて一年中踊らなくてはいけないなどの言い伝えがあるそう。
そしてみんなで「秋歌」を歌いながら、来た道を戻っていく。そんな習わしにもグッとくる。

新野の盆踊りにいく際は是非、最終日の「神送りの儀式」を体験することをおすすめする。



新野の盆踊りが終わったのと同時に、ワタシの「徹夜盆踊りの旅 2016」も終わりを迎えた。

他の盆踊りについてもまた改めて書こうと思うが、どの盆踊りもそれぞれ特徴があり、歴史があり、感動がある。
何百年という時間を経てもなお、変わらない人々の思いがそこにはあった。そして、それを自分の目で見て体験しているということに、最高のしあわせを感じる。


またもや盆踊りにハマってしまった。

さあ、次はどこで踊ろうか。

【新野の盆踊り】
長野県下伊那郡阿南町新野
毎年8月13〜16日 (17日の早朝まで)

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